新築時から10年間保証される瑕疵担保責任(契約不適合責任)をご存じですか?
不動産に関する『瑕疵(かし)担保責任』とは、不動産に何らかの瑕疵(欠陥・キズ・不適合などのトラブル)が見つかった場合に売主がその責任をとらなければならないというものです。(2020年4月に民法改正では、瑕疵担保責任に代わって『契約不適合責任』となり後に詳しくご説明致します)
瑕疵担保責任を問える『瑕疵』は、物理的瑕疵・環境的瑕疵・法律的瑕疵・心理的瑕疵に分類され、分かりやすいものでは雨漏りなどの構造的不備(物理的瑕疵)、自殺・事件経歴等がある事故物件あることを告知されず知らずに入居し、後で発覚した場合(心理的瑕疵)などが該当します。
実際にもし、瑕疵が見つかった場合どうなるのでしょうか。
新築住宅で瑕疵が見つかった場合
2000年4月施行の『住宅品質確保促進法』によって、新築物件は引き渡しから10年間(売主と買主の合意があれば20年間まで延長可能)、売主の保証が受けられます。
物理的瑕疵の保証は、基礎・柱・壁などの『構造耐力上主要な部分』と屋根・外壁などの『雨水の侵入を防止する部分』が対象です。これらの部位以外(出窓・ベランダ・壁紙など)は保証の対象外となります。
さらに、2009年10月施行の『住宅瑕疵担保履行法』によって、上記の最低10年間という保証期間内に売主であるハウスメーカーや工務店が倒産してしまったり、資金不足で保証が行えなかったりするケースなどを想定し、資金供託や瑕疵保険への加入を義務付けることで保証資金を手当てする制度も整備されています。
具体的に物理的瑕疵の保証範囲の『構造耐力上主要な部分』とは・・・
『構造耐力上主要な部分』として政令で定めるものは、住宅の基礎・基礎ぐい・壁・柱・小屋組・土台・斜材(筋交い・方づえ・火打材その他これらに類するものをいう。)・床版・屋根版または横架材(はり・けたその他これらに類するものをいう。)で当該住宅の自重若しくは積載荷重・積雪・風圧・土圧若しくは水圧または地震その他の振動若しくは衝撃を支えるものとする。としています。
具体的に物理的瑕疵の保証範囲の『雨水の侵入を防止する部分』とは・・・
『雨水の侵入を防止する部分として』として政令で定めるものは、
①住宅の屋根若しくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸・枠その他の建具。
②雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内側または屋内にある部分。としています。
新築物件引き渡しから10年以内で多い瑕疵の可能性が高い事例
- ①外壁目地コーキング(シーリング)の切れ・破断:(経年劣化は除く施工不良などによるもの)
- ②外壁のひび割れ・反り返り・はがれ等:(経年劣化は除く施工不良などによるもの)
- ③外壁の内部腐食(壁内結露)・汚損(カビの繁殖等):(経年劣化は除く施工不良などによるもの)
上記の事例では、ほとんどのハウスメーカーや工務店は『経年劣化によるものなので瑕疵ではありません、もし補修したいのであれば有償になります』と言われることが多いかと思います。(瑕疵を真摯に認めて無償で補修・改修してくれるハウスメーカーや工務店もありますが、補修の内容がその場しのぎの手抜き工事が多いので徹底的に内容を確認することが大事です。)
100%とは言えませんが、新築から10年以内にもし上記のような症状がありましたら瑕疵の可能性が高いです。
①外壁目地コーキング(シーリング)の切れ・破断:(経年劣化は除く施工不良などによるもの)
外壁の目地などに充填するコーキング(シーリング)の状態をお住まいの全ての面を確認してみてください。(確認することが難しければ弊社で無料診断しております)下の画像のようなコーキング(シーリング)の切れ方をしていましたら、本来コーキングを充填する前に『プライマー』という専用の接着剤をコーキングを充填する箇所全てに塗布しなければならないのですが、塗布のし忘れ(悪意がなく)や手を抜いて塗布をしなかった為に切れてしまった状況が濃厚です。どちらにせよ悪意のなかった『塗布のし忘れ』でも、悪意のあった『手を抜いて塗布しなかった』のどちらでも、このような切れ方をしていましたら瑕疵に該当する可能性が非常に高いです。
また、下の画像のように真ん中部分から割れて(破断)いる場合は、コーキングの充填量が不足していたのが原因の場合と、施工時に現場で撹拌(混ぜ合わせて)調合した材料が調合ミスにより本来もつコーキングの品質が著しく悪化し、そのコーキングが住宅の揺れなどに固く追従できなく割れてしまった可能性があります。
②外壁のひび割れ・反り返り・はがれ等:(経年劣化は除く施工不良などによるもの)
次は外壁のひび割れ・反り返り・はがれ等の症状です。こちらももし10年以内に症状がでていましたら瑕疵の可能性が高いです。
まず外壁のひび割れ・反り返りは『構造耐力上主要な部分』に起因する、柱・斜材・横架材の施工不良によるものの可能性があり、または反り返り・はがれ等は『雨水の侵入を防止する部分として』に起因する、コーキング充填の施工不良によるもの・建築基準法から逸脱した外壁の施工不良によるものなどの原因によって、外壁内部に雨水が侵入して外壁内部が湿気をおび、内部結露が発生して下地の木材の腐食により壁材が水分を含むことで膨張して反り返り、しまいには耐えられなくなりひび割れてやハガレが発生する可能性が高くなります。
③外壁の内部結露(壁内結露)・汚損(カビの繁殖等):(経年劣化は除く施工不良などによるもの)
こちらの症状は一見、『汚れが目立ってきたなーそんなに大した事ないからまだ問題ないでしょ』と簡単に考えてしまうと後で大変なことになって手遅れとなってしまいますので特にご注意ください!
中古住宅で瑕疵が見つかった場合
新築物件とは違って、中古物件は引き渡しから10年間という決まりはなく、売主と買主との間の合意のうえで瑕疵担保責任の保証期間が個別に取り決められています。
新築と同様の保証期間にすると将来的に瑕疵が発覚するのを恐れて売主が不動産を売りずらくなってしまうため、実際には契約書の中で売主が負う瑕疵担保責任の期間を引き渡し後3カ月・6カ月・1年などと限定することが多いようです。
また、築年数が古い住宅の場合は『現状有姿』といって売主と買主の合意のうえ、売主は瑕疵担保責任を全く負わないという契約書が作成されることも少なくはないようです。
ただし、売主が個人ではなく不動産会社の場合は瑕疵担保責任は2年間と定められています。住宅流通を取り扱う専門家は相応の責任を負うことが義務付けられているのです。
『瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』の違い
2020年4月に実施される民法改正では、これまで説明してきた『瑕疵担保責任』から(契約の内容に適合しないもの)に関して負う責任『契約不適合責任』という表現に変更されます。これは契約に基ずいて発生する責任(債務不履行責任)ということです。
この変更によって、買主が取り得る手段がこれまでの損害賠償請求と契約解除に加え、追完請求(完全履行請求)と代金減額請求も可能になります。具体的には、補修(瑕疵を修理し補うこと)、代替物を引き渡すこと、不足分を引き渡すことを請求できるようになり、またこれらが売主によってなされない場合には、催告して代金の減額を求めることもできるようになるのです。
また、契約の解除についても事前の催告が必要なものの、今回の改正によって『契約目的の達成は可能だが、ハードルが高い』という場合についても契約解除できるようになり、解除できるケースが増えることも予想されます。さらに瑕疵自体も『隠れた瑕疵』である必要がなくなり、買主が瑕疵を知らなかったかどうかは解除の要件としては不要となります。
また、民法改正後は信頼利益(有効でない契約が成立したと誤信したために生じた損害)だけでなく履行利益(契約が履行されていれば、その利用や転売などにより発生したであろう利益)も損害賠償請求の対象となり、現実的に買主が行使しやすい対抗措置となります。
ただし、『契約不適合責任』は瑕疵担保責任と同じく任意規定であるので、契約で売主の責任を制限することは可能です。このため中古物件を不動産会社からの売買ではなく、個人間売買においては契約不適合責任について一部または全部免責することも契約上は可能となりますので十分注意し確認致しましょう。
不動産購入時は契約書類を徹底的に注意して確認すること
契約不適合責任に対応するには、まずは売主が契約書や重要事項説明書や関連書類に物件の状態・状況を認識している限り全て記載すること、そしてそれを買主が徹底的に注意して確認することがとても重要です。
細かい説明などは見逃しがちで『しっかりしている不動産屋さんだから大丈夫だろう』と不動産会社に任せてしまうケースも多いので、民法改正を機に、とにかく契約書類や関連書類は全て徹底的に確認し、分からないことは確認することで失敗することが少なくなると思います。