①雨漏りについて・・・雨漏りの現状
雨漏りのイメージとしては、屋根から雨漏りしているのではないかというイメージがありますが、補償件数としては屋根よりも外壁が多いのです。雨漏り以外では基礎・構造・その他ですが、全体の30%に過ぎません。外壁からの雨漏りに対する補償が圧倒的に多いのが現状です。(外壁にはバルコニーや軒天も含まれています)
2000年4月1日より施工された『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(通称:品確法)によって、新築住宅を取得してから10年間、「構造耐力上主要な部分」と「雨水を防止する部分」に何かしらの「瑕疵」が見つかった場合、施工者(売主)は建築主(買主)に対して、修理や損害賠償の責任を負う義務があります。
構造と雨漏り以外の保証については、一般に2年ですから、雨漏りに対する保証の重要性は際立っているといえます。
さらに、雨漏りの瑕疵担保期間(欠陥を無料で補修する期間)は上記の品確法では10年となっていますが、2011年の最高裁判決では、『雨漏りなどの瑕疵には、民法の不法行為責任が問われる』との判断が示され、不法行為責任の時効は20年。つまり雨漏りの瑕疵は20年にわたって責任が追及される可能性があります。不法行為責任で争った判例は多くはありませんが、将来の方向性としては、厳しくなってくると思われます。
雨漏りの4要素
雨漏りは、下記の4つの条件の組み合わせによって発生します。
①雨量
②風の向き
③風の強さ
④雨降り継続時間
雨が弱く上から降る雨だけなら、雨漏りしないことが通常ですが、下から上に舞い上がる雨もあります。雨が降ると、常時雨漏りするわけではありません。現場ごとの条件があります。大型台風が遅いスピードで直撃する場合などは、一般敵に①雨量が多く、②風向きはほぼ全方向、③風の強さは強く、④雨降り継続時間はそれなりに長くなり、雨漏りにとって最悪の条件となります。
意外と多い新築の雨漏り
建物の経年劣化による雨漏りもありますが、入居後数カ月で雨漏りする可能性もあります。
雨漏りの原因の多くである屋根・外壁の施工不良があると、新築であっても雨漏りします。建物が経年劣化するという理由だけで雨が漏れるわけではありません。
雨漏りには必ず原因が存在します。雨漏りは、適正な材料を用いて、適正な施工を行えば発生はしません。雨漏りしやすい納まりはありますが、施工時に配慮すれば、雨が漏りしにくくはできます。
雨が漏るということは、何らかの施工上の不備があったことを意味します。最近の現場では、材料に難があることは少なく、それなりの材料を使用しますので、施工に問題があることが圧倒的に多いです。しかし新築時なら、適正な施工を実施すれば、雨漏りを発生させないことも可能です。新築以外の場合で、屋根材・外壁材を全部めくってやり直しすれば、問題を解決できますが、一部でも屋根材・外壁材を残す場合には、雨漏り発生の可能性はゼロにはできません。
一度発生した雨漏りを完全に直すことは難しいのです。やってしまった仕事をやり直すのは勇気が要ります。雨漏りの原因を解明できる技術者は少ないのです。解明には時間をかけて、散水試験を実施しなければなりません。完全に雨漏りを直すことができる技術者も職人も少ないのです。施工者としては、補償として無償で工事する以上、なるべくコストをかけずに直したいという気持ちもあります。必要以上にケチった工事は失敗する可能性が高いのですが、とりあえずその場を乗り切りたい工務店やハウスメーカーが多いのです。
②なぜ漏るのか
雨漏りのメカニズム
建築物には『1次防水』といわれる、屋根や外壁などの外から直接見える部分の屋根材や外壁材やシーリングなどと、『2次防水』といわれる、外からは見えない部分になります。
『2次防水』箇所の具体例で、屋根部分ですと捨て板金やアスファルトルーフィング(防水紙)などで、外壁部分ですと捨て板金や透湿防水シートなどが該当します。
この『1次防水』と『2次防水』が雨漏り防ぐ大切な役目で、雨水の侵入を屋根材や外壁材やシーリングなどの1次防水で、できるだけ防ぎます。防ぎきれない若干の雨水については、防水シートなどの2次防水で防ぎます。
防止シートの上には雨水が流れている状態ですので、建物本体を傷めないうちに速やかに雨水を排出しなければなりません。
2次防水を突破した雨水が、雨漏りになります。
雨漏り修理を行う際に、屋根や外壁をめくってみると2次防水のどこかに不具合がある場合が多いです。2次防水が適正な材料と施工であれば雨漏りは発生しません。
雨は上から下に降るだけとは限らず、風により横からはもとより、下から上に舞い上がって降る場合もあります。
雨水は極めて小さな隙間からも侵入します。
言い方を変えれば、雨漏りに対して重要な役割を担う『2次防水』を紫外線から守り、経年劣化を防ぐための保護剤が屋根材や外壁材であるとも言えます。
③どうすれば防げるのか
外壁通気工法
外壁材の工法は、通気工法か直張り工法かに分けられます。
外壁材がサイディング材の場合は外壁通気層を設けることが標準になっています。昔はほとんどの現場で通気層がない直張り工法でした。サイディング材と透湿防水シートの間の通気層に空気を通すことによって、建物の耐久性は大幅にアップします。
外壁サイディング材の裏側の通気層(厚み15~24mm)により、侵入してしまった雨水や結露水を重力排出することができます。
この外壁通気工法によって、雨漏りや結露などの問題のかなりの部分が解消されます。